「製造業 ホームページ制作」で検索すると、制作会社を並べた記事がいくつも出てきます。ただ、実際に困るのはその先です。見積書が2〜3通届いたとき、どこを見比べればよいのか。月額制と書いてあるが、それはよくある「リース契約」とは違うのか。作ったあとで業者と揉めないか。この記事では、制作会社の名前を一切出さずに、見積書と契約書で確認しておきたい項目だけを書きます。
製造業のホームページは、誰が見に来るのか
先に、誰のために作るのかを確かめておきます。製造業のホームページを見に来る人は、大きく3種類です。
1つ目は、発注先を探している設計・調達の担当者です。メーカーが新しい取引先を探す理由は、コストを下げたい、いまの取引先では対応できない加工や材質が出てきた、品質や納期が安定しない、後継者がいなくて今までの発注先に頼めなくなった、といったものです(テクノポート「メーカーが新規取引先を探す理由とサプライヤー側の取るべき対応」)。こうした担当者が最初に使うのは検索エンジンです。機械・機器の導入に関わった516名を対象にした調査では、候補を知るきっかけと一次選定の情報源の1位はどちらも検索エンジンで、最終的に決める段階になると営業担当や出入り業者への相談が上位に来ます(メディックス「製造業向け製品・サービスの選定に至るまでの情報収集源」2019年11月)。つまり、ホームページは最初の接点で、最後は人が決めます。最初の接点がなければ、候補に入りません。
2つ目は、求人を見て応募を考えている人です。応募の前に会社名で検索されることについては、別の記事にまとめています。
3つ目は、元請けや金融機関、協力会社など、取引の前に会社を確かめたい人です。
この3種類に、それぞれ何を見せたいか。それを決めてから見積もりを取ると、各社の提案がそろい、比べやすくなります。
費用の相場と、その読み方
制作会社の仲介サイトが公開している発注データでは、製造業のホームページ制作の平均は約133万円、中央値は約54万円、50万円以下が48%とされています(Web幹事、対象数と時期の記載はなし)。別の制作会社の整理では、小規模で50〜150万円、中規模で150〜400万円、大規模で400万円以上です。
数字の幅が大きいのは、「ホームページ制作」という言葉の中身がばらばらだからです。取材と原稿作成を含むか、写真撮影を含むか、公開後の更新を含むか、何ページ作るかで、同じ言葉でも金額は何倍も変わります。相場を見るときは、金額の大小より「その金額に何が含まれているか」を見ます。以下の10項目は、そのための確認リストです。
見積書と契約書で確認する10項目
1. ドメインの名義は、自社になっているか
ドメイン(例: ○○.co.jp)は、ホームページの住所です。制作会社が取得を代行し、名義が制作会社になっているケースがあります。この状態で業者を替えようとすると、同じURLが使えなくなる、管理画面の情報を渡してもらえない、権利を買い取るのに数十万円を求められる、といったトラブルが実際に起きています(Web幹事「ホームページ制作のトラブル事例と4つの対策」ほか)。
見積もりの段階で、「ドメインは当社名義で取得しますか」「管理画面のログイン情報は共有してもらえますか」と聞いてください。すでにあるドメインなら、いま誰の名義かをドメイン管理会社の画面で確かめます。
2. サーバーの契約者は、誰か
サーバーは、ホームページのデータを置く場所です。これも制作会社の名義で契約されていると、業者を替えるときにデータを移せません。制作会社が倒産した場合、連絡が取れないままサーバーの契約が切れ、ホームページが消えることもあります。自社名義で契約し、制作会社には管理を任せる形が安全です。
3. 制作物の著作権と、解約時のデータの引き渡し
作ってもらったデザインや文章の権利が誰のものか、契約を終えるときにデータ一式(HTML、画像、原稿)を受け取れるかを確認します。ここが曖昧だと、業者を替えるたびに一から作り直しになります。
4. 契約期間と、途中でやめるときの条件
いちばん注意が要る項目です。「初期費用0円、月額○万円」という案内の中に、リース契約が混ざっていることがあります。
ホームページの制作そのものはサービスなので、リースの対象になりません。そこで、パソコンやホームページ作成ソフトを「物件」として、リース会社と契約させる形が取られます。契約の相手は制作会社ではなくリース会社になり、原則として途中で解約できません。事業者としての契約なので、特定商取引法のクーリング・オフも適用されません。月2万円で3年なら72万円、月3万円で5年なら180万円を払い終えても、ホームページは自社の資産になりません。制作会社が倒産しても、リース会社への支払いは続きます(Web幹事「ホームページのリース契約が危険な5つの理由」、LeadGrid「ホームページのリース契約に注意」)。
実際に、5年のリース契約を結んだ大阪の事務所で、4年目に制作会社が倒産し、サーバーとドメインの管理者がリース会社だったため移管できず、新しいドメインで一から作り直しになった例があります(アナログエンジン「ホームページをリースやローン契約された場合の解約相談」)。
リース契約そのものが違法というわけではありません。仕組みを知らないまま結ぶことが問題です。契約書に「リース」「賃貸借」「○○ファイナンス」といった言葉があるか、契約の相手が制作会社かリース会社か、途中解約の条件は何か、この3点を見てください。
月額制のサービスでも、最低契約期間と解約の条件は必ずあります。「何か月で解約できるか」「解約したらホームページはどうなるか」を聞いてください。
5. 月額に、何が含まれているか
月額制の場合、その金額に含まれる作業の範囲を書面で確認します。お知らせの追加、写真の差し替え、ページの追加、サーバーとドメインの更新、SSL(通信の暗号化)の更新、不具合の対応。どこまでが月額内で、どこからが別料金かを、項目ごとに聞きます。
6. 更新の頼み方と、返答までの目安
公開してから止まってしまうホームページの多くは、更新の頼み方が決まっていないか、頼んでも返事が遅いことが原因です。メールで頼むのか、専用の画面があるのか、頼んでから何日で反映されるのか。ここは金額に出ない差です。
7. 取材と原稿作成を、誰がやるか
製造業のホームページで一番手間がかかるのは、原稿です。加工の種類、設備、対応できる材質やサイズ、製作事例。これを社内で書くのか、制作会社が取材して書くのか。「原稿は御社でご用意ください」という見積もりは、金額が安く見えても、社内の時間が大きくかかります。
8. スマートフォンでの表示と、表示の速さ
発注先を探す担当者も、求人を見る人も、スマートフォンで見ます。スマートフォンで読みやすいことと、写真が多くても表示が遅くならないことは、公開前に確認できる項目です。
9. 公開後に、何を報告してもらえるか
どのページがどれだけ見られたか、どんな言葉で検索されて来たか。月に一度でも報告があれば、次に足すページや直す所が決まります。報告がない契約は、公開して終わりになりやすいです。
10. 制作会社に何かあったとき、どうなるか
倒産、担当者の退職、連絡が取れなくなる。起きてほしくないことですが、1〜3の名義と権利が自社にあれば、別の会社に引き継げます。逆に、名義も権利も制作会社にあると、上の大阪の例のように一から作り直しです。
作ってからが、本番です
見積もりを見比べて業者を決めても、それで終わりではありません。製造業のホームページから問い合わせが来ない原因として、会社案内をそのまま画面にしただけになっている、技術の自慢が並んでいて発注する側の困りごとの言葉になっていない、数年前から更新が止まっている、の3つがよく挙げられます(INGTACT「製造業のホームページから問い合わせが来ない本当の理由」)。
町工場の経営者が対談の動画でこんな趣旨のことを話していました。取引先ゼロから始めて、いまは仕事の8割が工業会や同業からの紹介。用もないのに連絡したり、頭を下げて売り込むのは得意でないからやっていない。ただ、そんなに長くいいことは続かないと思うので、これから営業をどうするか考えている、と(YouTube「【製造業の営業方法】を町工場社長に聞いてみた」新人社長が行く!製造業チャンネル)。
売り込みが得意でない会社ほど、ホームページは「見つけてもらう」ための道具になります。ただし、見つけてもらえるのは、製作事例や設備の情報が積み上がっているホームページです。作って終わりではなく、月に一度でも何かを足せる契約かどうか。10項目のうち5・6・9は、そのための確認です。
月額制を選ぶときも、同じ項目を
製造業の会社のためのホームページ制作サービス「製造WEB」は、初期費用0円の月額制です。だからこそ、この記事の10項目は、製造WEBを検討していただくときにも、そのまま当てはめてください。ドメインとサーバーは自社名義、制作物の著作権は御社に帰属、最低契約期間と解約の条件、月額に含む作業の範囲は、お見積りの段階で書面でお示しします。
どの会社に頼むにしても、見積書の金額より先に、この10項目を確かめてください。それだけで、作ったあとの後悔はかなり減らせます。