求人を出しても応募が来ない。来ても、面接の前に連絡が途絶える。製造業の会社から、そんな話を聞くことが増えました。人が足りない原因の多くは、一社の努力では動かせません。ただ、その中に「自社で今週から変えられること」も混ざっています。この記事では、その切り分けをしたうえで、応募を考えている人が会社名で検索したときに何が起きているか、採用ページに何を載せるべきかを、出典のある数字と現場の声をもとに整理します。
数字で見る、製造業の人手不足
まず現状を、厚生労働省の統計で確かめます。
2026年3月の有効求人倍率は、全職業の平均で1.10倍でした。同じ月の「生産工程従事者」、つまり製造の現場で加工・組立・検査・機械の整備などを担う職種は1.57倍です(厚生労働省「一般職業紹介状況」令和8年3月分、パートを含む常用)。求職者1人に対して、1.5社以上の求人がある状態です。パートを除いた正社員に近い区分では1.70倍まで上がります。
つまり、製造の現場職は「求人はあるが、人が足りない」職種の代表です。求人票を出せば埋まる時代ではなく、求職者が会社を選ぶ側に立っています。
もう1つ、採用の入口で起きていることを示す数字があります。ハローワークに出された新規求人のうち、実際に採用に結びついた割合は、2024年に11.6%でした。統計を取り始めてから最も低い水準で、出した求人の9割近くが空振りに終わっています(日本経済新聞 2025年4月30日、元データは厚生労働省「一般職業紹介状況」)。
自社で変えられること、変えられないこと
人手不足の原因は、大きく2つに分かれます。
変えられないことは、働く世代の人数が減っていること、地域の人口、製造業に対する古いイメージ(きつい、汚い、危険)です。これらは一社の努力では動きません。
変えられることは、給与や休日などの条件、職場の環境、教える仕組み、そして「会社の見え方」です。
| 区分 | 中身 |
|---|---|
| 変えられないこと | 労働人口の減少、地域の人口、業界全体の古いイメージ |
| 変えられること | 給与・休日・残業などの条件、職場環境、教育の仕組み、会社の見え方 |
条件と環境の話は、この記事では深く扱いません。ただ、順番として先に触れておきます。求職者の側から見ると、「人手不足だと言うわりに、求人の中身は若くて即戦力で残業もできて、それでいて人件費は抑えたい、になっている」という声がXには少なくありません。条件を見直さずに見せ方だけ整えても、応募には結びつきにくいです。一方で、下請けの単価が上がらない中で、赤字ぎりぎりまで人件費を上げても相場並みにしかならない、という経営側の本音も同じ場所にあります。
だからこそ、条件で大きな差をつけられない会社ほど、「会社の見え方」で差がつきます。この記事はそこを扱います。
応募の前に、会社名で検索されている
求人票を見て「良さそうだ」と思った人は、すぐに応募ボタンを押すわけではありません。多くの人は、その前にスマートフォンで会社名を検索します。
直近1年以内に転職した25〜49歳の515名を対象にした調査では、90.3%が応募前に企業の採用サイトを閲覧し、80.0%が「応募の決め手になる」と答えています。85.2%は「転職サイトや求人票の情報だけでは足りない」と感じており、中途向けの採用ページがない会社については、71.3%が「欲しい情報が見つからず意欲が下がる」、68.1%が「他社との違いがわからず興味を持ちにくい」と答えました(カケハシ スカイソリューションズ「採用サイトに関する意識調査」2024年5月)。
アルバイトやパートの応募でも同じです。直近3年以内にアルバイトを探した人のうち85.9%がホームページや採用サイトを見ており、そのタイミングは「応募を検討するとき」が90.9%でした(マイナビ「非正規雇用に関する求職者・新規就業者の活動状況調査」2024年)。
そのときに、次のような状態だと、応募の前に候補から外れます。
- 会社名で検索しても、ホームページが出てこない
- 出てきても、何年も前に作られたまま止まっている
- スマートフォンで開くと文字が小さく、拡大しないと読めない
- 「機械オペレーター募集」とあるだけで、どんな工場で誰が働いているのかがわからない
若い人の採用では、本人だけでなく家族も見ています。内定が出たあとに、親が会社のホームページを見て不安になり、辞退につながる例は「親ブロック」と呼ばれ、採用の現場では知られた話です。
まず、ご自身のスマートフォンで自社の会社名を検索してみてください。応募を考えている人と同じ画面を見ることが、最初の一歩です。
採用ページに載せておきたいこと
では、何を載せればよいのか。調査で見ると、応募前に読まれているのは、社員インタビューのような凝ったコンテンツではなく、基本の情報です。応募前の閲覧は「仕事内容」「事業内容」「会社概要」が中心で、社員や経営者のインタビューを読む人は2割程度にとどまります(WACUL「採用サイトのあるべき姿」調査、新卒・中途それぞれ約300名)。
つまり、順番があります。先に基本を正確に、あとから人の顔を足す。製造業の採用ページなら、次の項目です。
何を、どんな設備で、どこまで作っているか
会社の外からは、工場の中は見えません。求人票の「金属加工」だけでは、未経験の人には作業の様子が浮かびません。加工の種類、主な設備、扱う材料、製品が最終的に何に使われているかを書きます。
町工場の若い経営者が対談動画でこんな趣旨のことを話していました。板に穴を開けるだけの作業でも、その穴にあとでどんな加工がされ、どの製品に使われるかがわかると、仕事の見え方が変わる。今の職人はNC機やコンピュータで加工していて、昔ながらの職人のイメージとは違う、と(YouTube「【製造業の求人】町工場なぜ人気がない?給料・イメージ…」新人社長が行く!製造業チャンネル)。
一日の仕事の流れ
「8時30分始業、17時30分終業」だけでは、毎日のリズムがわかりません。朝礼の有無、休憩の時間、午後の作業、片付けの時間まで、時間の順に書きます。
入社してから覚えていく順番
未経験の人が一番知りたいのは「入ってから、どう教えてもらえるのか」です。最初の1週間、1か月目、一人立ちまでの段階を書きます。「最初の3日は安全教育」「2週目からは先輩について材料の運搬とバリ取り」のように具体的に書くと、応募のハードルが下がります。
早期離職の調査では、半年以内の離職があった企業は57%、その最大の要因は「仕事内容のミスマッチ」で57%でした(エン・ジャパン「早期離職」実態調査 2025年、291社)。入社前に実態を見せることは、応募を増やすだけでなく、入ってからのずれを減らすことにもつながります。
一緒に働く人と、職場の写真
年代の構成、未経験で入った人が何人いるか。それと、現場の写真です。最新の機械が並んでいる必要はありません。通路に物が置かれていないか、工具が定位置に戻っているか。整理された工場の写真は、言葉より先に、職場の安全と誠実さを伝えます。
休日と残業の実際
「週休2日制」「残業あり」だけでは実態がわかりません。繁忙期と閑散期の違い、有給が実際にどのくらい取られているかを、正直に書きます。隠しても、入社後にわかります。
資格取得の支援
玉掛け、フォークリフト、溶接、技能検定など、会社が費用を負担して取らせている資格があれば書きます。手に職をつけたい人には、給与と同じくらい響く情報です。
「アットホームな職場です」「風通しのよい会社です」は、どの会社の求人にも書いてあります。抽象的な言葉を重ねるより、具体的な作業の順番と現場の写真1枚のほうが、応募を考えている人には誠実に届きます。
求人媒体とホームページは、役割が違う
ハローワークや求人サイトは「知ってもらう場所」です。自社のホームページは「確かめてもらう場所」です。どちらか一方ではなく、両方が要ります。
ただし、ハローワークだけに頼ると、若い人には届きにくくなっています。ハローワークの求職者のうち29歳以下は16.5%、60歳以上が30.3%です(2025年、リクルートワークス研究所の分析、元データは厚生労働省)。19〜29歳の利用は、2000年を1とすると2025年は0.5未満まで減っています。
求人媒体への掲載は、期間が終われば消えます。自社のホームページに書いたことは残り、積み上がります。採用ページを一度きちんと作っておけば、ハローワークの求人票の備考欄にURLを書くだけで、求人票に書ききれなかった情報へ誘導できます。
小さく始めるなら、この順番で
いきなり全部を作り直す必要はありません。
- 社名で検索して、現状を見る。 自分のスマートフォンで会社名を検索し、出てきたページを開きます。文字が読めるか、情報が古くないかを確かめます。
- 現場の写真を撮る。 スマートフォンで十分です。晴れた日の午前中に、通路、作業の様子、休憩室を撮ります。散らかっていれば、撮影を機に片付けるきっかけにもなります。
- 「一日の流れ」と「入社後に覚える順番」を書き足す。 新人に口頭で説明している内容を、そのまま文字にして箇条書きにするだけで足ります。
- 求人票から採用ページへ誘導する。 ハローワークや求人サイトの備考欄に、「職場の写真と一日の流れはホームページをご覧ください」と一言添えます。
社内で写真や文章を用意する時間が取れない場合は、外に頼む方法もあります。製造業の会社のためのホームページ制作サービス「製造WEB」では、担当者が仕事の内容や現場の様子をうかがい、原稿から用意します。
人が足りない時代だからこそ、現場のありのままの良さを、外から見える形にしておくことが採用の分かれ目になります。まずは、自社の名前を検索するところから始めてみてください。
運営