町工場の経営者が対談動画で、取引先ゼロから始めていまは仕事の8割が紹介、売り込みは得意でないからやっていない、ただ「そんなに長くいいことは続かないと思うので、これから営業をどうするか考えている」と話していました(「製造業のホームページ制作会社の選び方」の記事で紹介)。同じ状態の会社は多いはずです。この記事では、なぜ新規開拓が要るのかを先に確かめ、発注側がいつどう探すのかを押さえ、紹介・展示会・Webの役割分担と、問い合わせが来る会社の共通点を書きます。
なぜ新規開拓が要るのか: 依存と、技術の値段
製造業専門の制作会社が、製造業がホームページで営業すべき理由として、2つを挙げていました。1つ目は、特定の取引先や業界への依存から抜けるためです。コロナ禍で自動車や工作機械の生産が落ちたとき、その業界に属する会社が一気に売上を落とした。売上の大半を1社に依存していると、無理なコストダウンの要求も断れない。外部環境の変化は定期的に必ず起きるので、取引先の数を増やして依存を薄めることが、会社を残すために要る、と。
2つ目は、技術を高く買ってもらうためです。同じ技術を同じ業界に売り続けると、競争と値下げ要求で単価が下がり、人件費と材料費の高騰で気づけば利益が残っていない。技術を別の用途で使ってもらえれば、既存の市場では考えられない値段が付くことがある。ただ、その用途を持っている技術者を、こちらから探し当てることはできない。向こうに見つけてもらう場が要る、と(YouTube「ホームページによる営業活動を行うべき3つの理由」テクノポート)。
元大手電機メーカーの技術者も、既存技術の新しい用途を探して新しい市場に出る「用途開発」は、新技術の開発より少ない投資で効果が出る可能性があり、その醍醐味は「自社では想像していなかった使われ方を見つけること」だと話していました(YouTube「既存技術を活かして新市場開拓する必要性・進め方」)。新規開拓は、売上を足すためだけでなく、技術の値段を守るためのものです。
発注側は、いつ、どう探すのか
大手メーカーの開発設計者4名への聞き取り調査では、新しい外注先を探すのは「既存のサプライヤーでは対応できないとき」で、探す順は、社内の購買担当、取引のある商社、それでも見つからなければ展示会かWeb検索でした。Web検索の言葉は材料名と加工名の組み合わせで、サイトで最も重視するのは製品や取引先の実績です(テクノポート調査、MONOist 2024年4月)。メーカーが新規の取引先を探す理由は、コスト削減、既存で対応できない技術、品質、安定供給、複数購買、後継者不足で今の発注先に頼めなくなった、対応が悪い・遅い、の7つに整理されています(テクノポート「メーカーが新規取引先を探す理由」)。
つまり、相手は常に探しているのではなく、困ったときに探します。こちらから会いに行くタイミングと、相手が困るタイミングは、まず合いません。だから新規開拓は、「会いに行く」だけでなく「困ったときに見つかる」状態を作ることが本体になります。
紹介・展示会・Webの役割分担
製造業専門の制作会社が、中小製造業の営業手法9つを、コスト・労力・効果で評価しています。紹介営業はコスト低・労力低・効果◎、展示会はコスト高・労力高・効果◎、飛び込み・テレアポはコスト高・労力高・効果△、Web広告はコスト高・労力低・効果◎、ホームページ・SEOはコスト低・労力中・効果◎で、9つの中で唯一の最高評価。理由は「効果が蓄積され続けて、会社の財産になる」からです(テクノポート「製造業の営業手法9選」。制作会社の評価なので、Web寄りであることは差し引いてください)。
この評価を、上の「相手はいつ探すか」と合わせると、役割分担はこうなります。
紹介: 深いが、広がらない
紹介は、相手の信用を借りて始まるので受注に近く、費用もかかりません。ただ、紹介者の人脈の範囲でしか広がらず、紹介者がいなくなると止まります。冒頭の町工場の「長くは続かない」はこのことです。紹介で来た相手も、あとで会社名を検索してホームページを見ます。紹介を受ける会社ほど、見られる場所を整えておく意味があります。
展示会: テーマ型で、会った後はWebで見られる
展示会営業のコンサルタントが動画で、展示会は「工作機械に興味のある来場者だけが来る」テーマ型の場なので、営業マンが何人もいる会社でなければ、テレアポや飛び込みより向いている、と話していました(YouTube「展示会のプロだけが知る集客の成功例」)。製造業のマーケティング担当129名への調査でも、実施率が最も高い施策は展示会52.7%です(メディックス、2026年3月)。
ただ、展示会で会った相手は、その場では決めません。業務用製品の購入決定に関わる200名への調査では、情報源は企業の公式Webサイト70%が最多で展示会41%、比較検討するのは3〜5社が60%でした(イントリックス、2024年12月)。展示会は入口で、その後に会社のサイトを見て、他の数社と比べます。展示会の成果は、展示会の外で決まります。
Web: 困ったときに見つかり、蓄積する
紹介も展示会もないところに、いきなり来る問い合わせの入口です。相手が「既存で対応できない」と困って検索したときに、材料名と加工名で出てくること。ページを1枚足すたびに入口が1つ増え、減りません。この蓄積が「財産」と呼ばれる理由です。熱処理の会社の経営者が動画で、ルート営業だけだった会社が、「焼入れ」という加工名でホームページの検索対策と広告を出したところ、大手メーカーの新しい開発案件の問い合わせが来た、という趣旨の話をしていました(YouTube「製造業の新規営業」。自動字幕からの要約です)。
問い合わせが来る会社の共通点
新規の問い合わせが実際に来ている会社の話を並べると、共通点は5つに絞れます。
- 強みを1つに絞って、数字で書いている。愛知県のネジのプレス加工の町工場は、扱う加工の中から「六角穴打ち加工」の1つに絞って打ち出し、県内が主だった受注先が全国に広がりました(「製造業のBtoBサイト制作」の記事で紹介)。「高精度」ではなく「この形状で±何ミクロン」「この数量なら何日」まで書きます
- 加工・材質ごとにページを分けている。相手は「プレス加工」「チタン 切削」と1つのことだけを検索します。1ページにまとめると、どの検索にも出ません(「製造業のSEOは『材料名×加工名』から」の記事)
- 実績を、写真と材質・寸法・ロット・納期で出している。設計者が最も重視するのは実績で、ISO認証はさほど重視されていません
- 問い合わせの返事が速い。3〜5社と比べられている相手にとって、最初に返事が来た会社が候補の筆頭になります。図面を添付できる見積依頼フォームと、返信の目安を書いておきます
- 続けている。産業用機械の会社は毎月の更新を3年続けて、Webからの問い合わせが16件から47件になりました(「製造業のSEOは『材料名×加工名』から」の記事で紹介。制作会社の事例です)
5つとも、営業マンがいなくてもできます。紹介と展示会で会う相手が、あとで見に来る場所を、この5つで整えておく。それが、紹介・展示会・Webの役割分担の意味です。
まとめ
- 新規開拓は、依存を薄めて会社を残すためと、技術の値段を守るため
- 相手は「既存で対応できないとき」に探す。だから、見つかる状態を作る
- 紹介は深いが広がらない。展示会はテーマ型で、成果は展示会の外で決まる。Webは困ったときに見つかり、蓄積する
- 問い合わせが来る会社の共通点は、強みを1つに絞る・加工ごとに分ける・実績を出す・返事が速い・続ける
製造業の会社のためのホームページ制作サービス「製造WEB」では、加工・材質ごとのページ、製作実績、図面を添付できる見積依頼フォームを、この5つの共通点に沿って作ります。公開後に実績とページを足していく作業も続けて担当します。紹介と展示会で会った相手が見に来る場所を整えたい会社は、ご相談ください。
