高卒採用は、中途採用とルールが違います。応募は本人からではなく学校を通して来ますし、多くの県では生徒は1社にしか応募できません。日程も決まっています。この記事では、厚生労働省の最新の数字で市場を確かめ、ルールを押さえ、製造業の会社が学校と先生に選ばれるためにやること、そして入社後3年以内に4割近くが辞める現実にどう向き合うかを書きます。作る前に決めることと採用ページの7項目は「製造業の採用サイト制作」の記事にあります。
数字: 求人4件に生徒1人。求人の3割は製造業
厚生労働省の取りまとめによると、2026年3月に高校を卒業した生徒のハローワーク求人は、求人数498,722人に対して求職者121,175人、求人倍率4.12倍でした。就職内定率は98.9%。就職を希望する高校生は、ほぼ全員がどこかに決まります(厚生労働省「令和7年度 高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」2026年3月末現在)。
産業別に見ると、製造業の求人は152,334人で全体の30.5%、最大です。次が建設業92,980人、卸売・小売61,105人、医療・福祉42,894人。製造業の中では、輸送用機械25,902人、食料品20,138人、金属製品13,959人、電気機械11,151人、はん用機械10,488人と続きます。つまり、製造業の会社が高卒の求人を出したとき、競合は他業種より先に、同じ製造業の15万件です。
地域差も大きいです。京浜(東京・神奈川)は10.54倍で、東京だけなら16.12倍。東海は4.24倍(愛知4.94倍)、関東3.73倍、近畿3.05倍、東北3.02倍(青森2.47倍)。都市部ほど、生徒1人を10社以上で取り合っています。
ルール: 応募は学校経由。42都道府県は一人一社制
高卒採用の流れは、全国で申し合わせが決まっています。2026年度の例では、6月1日からハローワークに求人を申し込み、7月1日に求人票が発行されて学校に送られ、学校訪問が始まります。7〜8月に応募前の職場見学、9月5日から学校経由で応募書類(全国高等学校統一用紙)が提出され、9月16日から選考です。求人は充足するまで翌年6月末まで有効で、途中で取り消せません(厚生労働省「高卒就職情報WEB提供サービス」。日程は年度で変わるので、管轄のハローワークで確認してください)。
そして、一人一社制です。一次応募の期間中、生徒は1社にしか応募できず、応募先は進路指導の先生と相談して決め、学校の推薦で書類が送られます。2026年時点で複数応募を認めているのは5府県で、秋田・沖縄が3社まで、和歌山が上限なし、大阪と茨城が2社まで。残る42都道府県は一人一社制です(各都道府県の高等学校就職問題検討会議の申し合わせ。変わることがあるので、自社の県で確認してください)。
この仕組みが意味するのは、高卒採用では「生徒に選ばれる」より先に「先生に推薦される」必要がある、ということです。先生が生徒に勧めない会社には、応募が来ません。
学校と先生に選ばれるためにやること
1. 求人票の「仕事の内容」と「資格支援」を、先生が転記できる言葉で
工業高校には1校に2,000〜4,000通の求人票が届き、いまは「ハンディ進路指導室」というサービスで求人票をスキャンして、生徒が家で親とスマートフォンで見る学校が増えている、と採用の実務家が話していました(「製造業の採用サイト制作」の記事で紹介)。先生は求人票の内容を生徒向けの資料に書き写します。「金属加工業務全般」ではなく、何を、どんな機械で、何のために作るか。徳島の高校の就職担当の先生が「資格取得支援や学費補助の制度は絶対に書いてほしい」と頼んだ、という記事もあります。玉掛け、フォークリフト、溶接、技能検定を会社負担で取らせているなら、必ず書きます。
2. 学校訪問は、求人票を届ける場ではなく、先生の質問に答える場
7月1日以降、求人票を持って学校を訪問できます。先生が知りたいのは、離職率、育てる仕組み、福利厚生、そして「この会社に卒業生を預けて大丈夫か」です。過去に採用した卒業生がいれば、その人がいまどうしているかを話せるようにしておきます。
3. 応募前職場見学を受け入れ、来られない人には動画を
7〜8月の職場見学は選考ではなく、生徒が会社を知る場です。ここで見せるのは、実際に働く場所と、一緒に働く人です。見学に来られない生徒、親、先生のために、動画も用意できます。医療機器メーカーが公開している高校生向けの職場見学ムービーでは、入社十数年の社員が、自分の担当製品、設計に2か月かかった話、病院に使い方を教わりに行く話、入社前に「一緒に働く人がいい人か」を気にしていたことを、自分の言葉で4分ほど話しています。会社案内の映像より、こちらのほうが伝わります。
4. 親と先生が見るホームページを整える
求人票を見た生徒と親が次にするのは、会社名の検索です。学生への調査では、採用ページの情報が古いと志望度が下がる人が88.1%でした。高卒採用のホームページは、応募の窓口ではなく、求人票の裏側を見せる場所です。親が見るのは会社の安定性と将来、先生が見るのは離職率と育てる仕組み。載せる項目は「製造業の採用サイト制作」の記事に書きました。
3年以内離職37.9%。規模で2倍違う
厚生労働省の発表では、2022年3月に高校を卒業して就職した人の3年以内離職率は37.9%でした。事業所の規模で大きく違い、5人未満63.2%、5〜29人54.6%、30〜99人45.2%、100〜499人36.7%、500〜999人29.9%、1,000人以上26.3%です(厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」2025年10月)。
小さい会社ほど辞めるのは、条件だけの問題ではありません。日本政策金融公庫の調査の自由回答に、「応募はあるものの、実際の労働環境や作業内容がわかると辞退するなどミスマッチが多い」(紙器製造業)という声がありました(「製造業の採用で応募が来ない5つの理由」の記事で紹介)。入社後に分かることを、入社前に見せる。一日の流れ、最初の1週間に何をするか、現場の写真、休憩室。職場見学と動画とホームページは、応募を増やすためだけでなく、辞める人を減らすためのものです。3年以内に辞められると、その会社は次の年から先生に推薦されにくくなります。
順番
- 自社の県の制度(一人一社制か複数応募か)と、今年度の日程を管轄のハローワークで確認する
- 求人票の「仕事の内容」と「資格支援」を、先生が書き写せる言葉で書く(6月1日の申込前に)
- 7月1日以降、学校を訪問する。先生の質問(離職率・育てる仕組み・卒業生の様子)に答えられるようにしておく
- 職場見学を受け入れる。来られない人のために、社員が自分の言葉で話す動画を1本作る
- 会社名で検索して出るホームページを、親と先生が見る前提で整える
- 入社後の3年間を、最初の1週間から設計する。辞める人が減れば、翌年の推薦が増える
製造業の会社のためのホームページ制作サービス「製造WEB」では、高卒採用に合わせて、求人票の裏側を見せる採用ページ(仕事の中身・一日の流れ・教える順番・資格支援・先輩の話・現場の写真)を用意します。求人票を出す6月までに間に合わせます。学校訪問の前に見せられるページが欲しい会社は、ご相談ください。
