「若手を採っても、すぐ辞める」。製造業の経営者から一番よく聞く悩みで、たいてい「今の若い人は」で終わります。この記事は、そこで終わらせないために、2026年に出た若手の離職調査を読み、辞めた理由の中身を確かめ、採用ページに書き足せる3つと、社長側でできることを書きます。
数字: 辞めた理由の1位は労働環境、2位は「持ち味を発揮できない」
リクルートマネジメントソリューションズが2026年2月に社会人1〜3年目の968名(大学・大学院卒)に聞いた調査では、離職を考えたことがある人は62.2%でした(2023年は58.8%)。考えた理由の上位は「仕事にやりがい・意義を感じない」21.8%、「給与水準に不満」19.5%、「やりたい仕事ができない」14.1%です。
ここまでは、よく聞く話です。違うのは、実際に辞めた人の理由です。1位「労働環境・条件がよくない」22.4%、2位「能力や持ち味を発揮できない」21.6%、3位「希望する働き方ができない」19.2%。そして「給与水準に不満」は、前回調査の2位(18.4%)から6位(8.0%)に下がりました(「若手の離職実態調査2026」)。
この調査は大卒の若手が対象なので、製造現場の高卒や中途にそのまま当てはめることはできません。ただ、傾向として押さえておく価値があります。転職者全体の理由では「給与が低い」が36.6%で1位(doda 2025年)なのに対し、入社1〜3年目の若手が実際に辞める理由は、給与より「環境」と「持ち味」だということです。給与を上げれば辞めない、という単純な話ではありません。
もう1つ、企業側の調査です。エン・ジャパンが2025年に291社に聞いた調査では、半年以内の早期離職を直近3年で経験した企業は57%で、要因の1位は「仕事内容のミスマッチ」57%でした。対策として最も多く、最も効果があったのは「直属上司との定期面談」です。製造業では、高卒の3年以内離職率が37.9%、従業員5〜29人の事業所では54.6%という国の数字もあります(「製造業の高卒採用」の記事)。
「持ち味を発揮できない」とは、何が起きているのか
「能力や持ち味を発揮できない」が2位、というのは、若手が「自分が何をできる人か、会社が見ていない」と感じている状態です。製造業の現場で起きていることを、当てはめてみます。
入社して半年、材料の運搬とバリ取りだけをしている。次に何を任されるのか、誰も説明していない。教える先輩は忙しく、「見て覚えろ」になっている。本人は、自分がこの会社で何を任される人になるのかが見えない。これが「持ち味を発揮できない」の中身で、給与とは関係のないところで辞めていきます。
反対の例もあります。機械部品を加工する会社が、入社7年目の若手と、もう1人の若手の2人に協働ロボットの立ち上げを任せ、その若手が「自分のような若手にもロボットのプロジェクトを任せてもらえるのが、やりがい」と話していました(「製造業の人手不足の解決策」の記事で紹介した事例動画)。任される仕事が見えていれば、持ち味は発揮できます。
同じ2026年の調査で、定着した理由の1位は「転職にリスクを感じる」15.6%、2位は「職場の人間関係」13.0%、3位は「給与に満足」11.1%でした。1位は消極的な理由なので、実質的な1位は人間関係です。上司との「仕事の進め方の相性」が定着に影響する、とも分析されています。誰と働くか、誰に教わるかが、辞めるかどうかを決めています。
採用ページに書き足す3つ
上の数字を、製造業の採用ページに落とすと、書き足すのは3つです。仕事の中身・一日の流れ・職場の写真は「製造業の採用サイト制作」の記事に書いたので、その上に足すものです。
1. 任せる仕事の段階
最初の1週間、1か月目、半年、1年、3年で何を任せるか。「1年目は運搬と補助、2年目から段取り、3年目でNC旋盤を1台担当」のように段階で書きます。「持ち味を発揮できない」を防ぐのは、この見通しです。本人が「自分は何を任される人になるのか」を入社前に知っていれば、半年目の運搬の意味が変わります。
2. 教える人
誰が教えるか。その人はどんな人か。入社何年目で、何が得意で、どう教えるか。「上司との仕事の進め方の相性」が定着を左右するなら、面接で初めて会うより、採用ページで先に紹介しておくほうがミスマッチが減ります。製造業の社長が「創立何年」より「休憩中にコーヒーを飲みながら話している姿」を見せろと言っていたのは、このことです。
3. 任せる裁量
小さくても、本人が決められることを書きます。「自分の担当機械の段取りは自分で決める」「改善提案は月1回、社長が直接聞く」。任される範囲が明確な会社を選んだ、と話す転職者の話は「製造業の中途採用」の記事で紹介しました。
早期離職の要因1位が仕事内容のミスマッチなら、この3つは、応募を増やすためではなく、合わない人に入社前に気づいてもらうために書きます。日本政策金融公庫の調査の自由回答に「作業内容がわかると辞退する」という製造業の声がありましたが、入社前の辞退は、入社後の離職より、双方にとって損が小さいです。
社長側の要因
税理士でもある経営者が、「従業員が定着するのも離れるのも、すべて社長の責任」として、退職者が続く会社の特徴を動画で話していました。うまくいかない原因を外部のせいにする他責の思考は言葉に出て、社員にも求職者にも伝わる。自分ができることは社員もできて当然だと思っていたが、自分は泳げないことに気づいて、自分基準で判断するのをやめた。時間外労働を一気にゼロにはできなくても、毎月改善している姿勢を見せる会社は社員が理解してくれる。目標とノルマは違い、押し付けると一番よくない、と(YouTube「従業員を離職へ導く原因は”社長”にあります」)。
採用ページに「任せる仕事の段階」を書くには、社長がその段階を決めていなければ書けません。「教える人」を書くには、教える人を決めて、その人の時間を確保していなければ書けません。書けない項目が、いまの会社の弱いところです。
まとめ
- 2026年の若手の実際の離職理由は、労働環境22.4%、持ち味を発揮できない21.6%。給与不満は6位8.0%(大卒1〜3年目の調査)
- 半年以内の早期離職は企業の57%が経験。要因1位は仕事内容のミスマッチ
- 「持ち味を発揮できない」は、任される仕事が見えない状態。定着の実質1位は人間関係
- 採用ページに書き足すのは、任せる仕事の段階、教える人、任せる裁量の3つ
- 書けない項目があれば、それが会社側で先に決めることになる
製造業の会社のためのホームページ制作サービス「製造WEB」では、採用ページに「任せる仕事の段階」「教える人」「裁量」を載せるために、担当者が社長と現場の責任者に聞き取りをして原稿にします。教える人が変わったときの差し替えも続けて担当します。「若手がすぐ辞める」で止まっている会社は、この3つを決めるところから、ご相談ください。
