「せっかく採って、3か月教えたのに辞めた」。製造業で一番損の大きい出来事です。この記事では、早期離職の要因を数字で確かめ、辞める人が何で辞めているかを押さえ、入社前に見せておく5つと、入社後の面談の型を書きます。若手の離職理由は「若手がすぐ辞める理由」の記事に、一日の流れの書き方は「採用ページの『一日の流れ』の書き方」の記事にあります。
数字: 要因の1位はミスマッチ、対策の1位は上司との面談
企業291社への調査(エン・ジャパン、2025年3〜4月)では、半年以内の早期離職を直近3年で経験した企業は57%でした。従業員49名以下では46%、300〜999名では80%。要因の1位は「仕事内容のミスマッチ」57%。実施している対策の1位は「直属上司との定期面談」58%で、最も効果があった対策としても1位(24%)です。
国の数字では、高校を卒業して就職した人の3年以内離職率は37.9%で、事業所の規模で大きく違い、5〜29人は54.6%、30〜99人は45.2%、1,000人以上は26.3%です(厚生労働省、2025年10月)。大卒1〜3年目の調査では、実際に辞めた理由の1位が「労働環境・条件がよくない」22.4%、2位が「能力や持ち味を発揮できない」21.6%で、給与への不満は6位8.0%でした(リクルートマネジメントソリューションズ、2026年2月)。
そして製造業の声です。日本政策金融公庫の調査の自由回答に「応募はあるものの、実際の労働環境や作業内容がわかると辞退するなどミスマッチが多い」(紙器製造業)、「入社から3年以内に退職する方が多い」(農業用機械製造業)とありました(2026年6月)。
辞める人は「聞いていた話と違う」で辞めている
上の数字を1つにまとめると、早期離職の中身は「聞いていた話と違う」です。仕事の内容が違う、残業が違う、教えてもらえると思っていたのに違う、一緒に働く人が思っていたのと違う。給与が違う、は少ない。
製造業の採用支援者が話していた構造は、こうです。応募を集めようとして間口を広げる。合わない人が入る。現場が気を使い、教える側が疲れる。辞める。社長が「やっぱり製造業は人がいない」と言う(「製造業の採用で応募が来ない5つの理由」の記事)。この構造で起きているのは、入社後の教育の失敗ではなく、入社前に見せていなかったことの失敗です。
製造業で働いたことがない人の76.2%は「軽作業だとは思わない」と答えています。本人の頭の中の工場と、実際の工場が違うところから、ミスマッチは始まっています。
入社前に見せる5つ
早期離職の要因1位がミスマッチなら、対策は入社前に置きます。採用ページ、面接、職場見学の3か所で、次の5つを見せます。
1. 一日の流れ
時刻・作業・誰と・何を使うの4列で、職種ごとに。「8:30〜17:30」ではなく、朝礼から片付けまで。書き方は「採用ページの『一日の流れ』の書き方」の記事にテンプレートを置きました。
2. 現場の写真と動画
通路、設備、作業中の手元、休憩室、更衣室。夏の工場の暑さ、油のにおい、立ち仕事の時間は、写真では伝わりません。面接の前後に10分、現場を歩いてもらいます。来られない人には、社員が自分の言葉で話す1分の動画(「製造業の高卒採用」の記事で紹介した職場見学ムービーの形)。
3. 教える順番と、一人立ちの目安
最初の1週間、1か月、3か月で何を任せるか。誰が教えるか。一人立ちの目安は「3か月。人によって前後します」と、幅ごと伝えます。「持ち味を発揮できない」で辞める人は、自分がこの会社で何を任される人になるのかが見えていません。
4. 残業と繁閑の実際
月の平均残業時間、繁忙期はいつで何時間か、閑散期はどうか、有給が実際にどれだけ取られているか。隠しても入社後に分かります。分かってから辞められるより、先に伝えて辞退されるほうが、双方の損が小さい。上の自由回答にあった「作業内容がわかると辞退する」は、入社前に起きている分には悪いことではありません。
5. 一緒に働く人
誰が教えるか、班は何人か、年齢の構成、未経験で入った人が何人いるか。医療機器メーカーの若手社員が「入社前に、一緒に働く人がいい人か気にしていた」と話していたように、大卒若手の調査でも、定着の実質的な1位は職場の人間関係で、上司との仕事の進め方の相性が定着を左右すると分析されています。面接に、教える予定の先輩を同席させます。
入社後の型: 1週間・1か月・3か月
入社前に5つを見せた上で、入社後は、対策として最も効果があった「直属上司との定期面談」を型にします。1週間目、1か月目、3か月目に、教える先輩か班長が15分。聞くのは3つ。「聞いていた話と違ったことはあるか」「いま一番時間がかかっている作業は何か」「誰に聞けばいいか分からないことはあるか」。3か月目の面談で「聞いていた話と違ったこと」がゼロなら、入社前に見せたものが足りていた証拠です。
もう1つ、改善の見通しを伝えることです。岐阜の金属加工会社の2代目が、残業が多く給与が安かった会社で「5年後には良い会社になっているから、少し耐えてほしい」と若手に話して残ってもらい、5年で給与30%増・残業20%減にした話は「製造業の後継者不在とホームページ」の記事で紹介しました。税理士でもある経営者も、時間外労働を一気にゼロにはできなくても毎月改善している姿勢を見せる会社は社員が理解してくれる、と話していました。いま良くない条件は、隠さず、いつどう直すかを添えて伝えます。
小さい会社ほど辞めるのは、見せる情報が少ないから
高卒の3年以内離職率が、5〜29人の事業所で54.6%、1,000人以上で26.3%と2倍違うのは、小さい会社の条件が悪いからだけではありません。大企業には採用サイト、職場見学、内定者向けの資料、先輩社員との接点があり、入社前に見せるものが多い。小さい会社は、求人票と面接1回で入社になりやすい。見せる情報の量の差が、そのまま「聞いていた話と違う」の量の差になっています。上の5つは、小さい会社でも、採用ページと面接と10分の現場見学でそろいます。
まとめ
- 半年以内の早期離職は企業の57%が経験。要因1位は仕事内容のミスマッチ57%。給与ではない
- 辞める人は「聞いていた話と違う」で辞める。対策は入社後の教育より、入社前に見せること
- 入社前に見せる5つ: 一日の流れ、現場の写真と動画、教える順番と一人立ちの目安、残業と繁閑の実際、一緒に働く人
- 入社後は1週間・1か月・3か月の面談で「聞いていた話と違ったこと」を聞く
- 入社前の辞退は、入社後の離職より損が小さい。小さい会社ほど、見せる情報を増やす
製造業の会社のためのホームページ制作サービス「製造WEB」では、採用ページに上の5つ(一日の流れ、現場の写真、教える順番、残業の実際、一緒に働く人)を、担当者が現場を取材して載せます。面接前に見せられる状態を保ちます。「採っても半年で辞める」が続いている会社は、入社前に見せているものの棚卸しから、ご相談ください。
